☆ écru nacci ☆
--- セーラー・カメ デビュー! その@
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試合を終えた管理人。全身血だらけ、キズだらけ。
有刺鉄線のひっかきキズと割れた蛍光灯の破片とサボテンのトゲで体中グチャグチャだ。
やっとの思いで部屋へ戻ってくるとそのまま倒れこむ。
「きゃああ、どうしたの管理人さん?血だらけじゃない!」
「おお、カメちゃん。大丈夫、いつもの事だ。一晩寝れば治るよ。」
「また蛍光灯デスマッチやっちゃったの?きゃああ、額に割れた蛍光灯が突き刺さってるよ!」
「蛍光灯マスタードボブワイヤーボードラダーチェーンストラップ有刺鉄線バットサボテン月光闇討ちデスマッチだよ。
アイテムによってキズあとが違うんだ。ほらね。パンツの中まで蛍光灯の破片で血だらけだよ。ほら!」
「きゃああ、そんなとこ見せなくていいから!お願い、もうデスマッチはやめて!」
「そうはいかん、これから壁紙を作らねば。PCを立ち上げてくれ。フォトショップ・エレメンツを起動してくれ。」
「そんな体でムリだよ!腕が曲がってるよ。指が動かないじゃない。骨折してるんじゃないの?」
「大丈夫、もう8年もデスマッチをやってるんだ。いつもこんな体で壁紙を作ってきたのだよ。カメちゃん、マウスを取ってくれ。」
「きゃああ、マウスの!マウスのコードがない!きゃああああ!」
「うむ、愛用のワイヤレス・マウスだよ。くそう、手の感覚がない。カメちゃん、そいつをオレの手のひらにくくりつけてくれ。」
動かぬ体にムチ打って、血だるまのまま歯をくいしばり、壁紙を作る管理人。
えりはただじっと立ちつくし、管理人の作業を見つめるだけ。
そしていつものなちかべがみができていく。
(すごい。この人は命を削って壁紙を作っている。壁紙ってこうやって作るものなんだ。これが男の人の生きざまなの。)
えりは激しい感動に襲われその場に立っていられなくなる。
脚がふるえ、心臓が激しく動悸、その瞳には大粒の涙が・・・。
「管理人さん、ああ・・・私もう・・・。」
突然なちがみの声がした。
「あなたたち、何をやってるの?カメちゃん!どうしたのカメちゃん!しっかりして!!」
「なちがみさま、私涙が止まらない!どうにかなっちゃいそう!体が、私の体が向こうのほうへ!」
泣き叫ぶえり。その顔はもう涙でグショグショだ。
「なちがみさま、カメちゃんはもう少しなんです!あと少しなんです!もう少しでこちらの世界へこれるのです!」
「止めなさい!管理人さん、ダメよ!この子はまだ子供なの。カメちゃん、しっかりしなさい!大丈夫!?カメちゃん!!」
「・・・ああ。あれ?私どうしたんだろう。なちがみさま、私いったい何を?」
「大丈夫、あなたにはまだ早いの。今日のことは忘れなさい。何もなかったのよ。」
落ち着きを取り戻したえり。何があったのか、自分でもよく覚えていない。
「ところで管理人さん。」
「は、はい。何でしょう?」
「マスタードってアイテム。デスマッチでどう使うの?」
「相手のキズ口に塗りたくるのです。体中にしみて苦痛でのたうちまわります。レモン汁でもいい感じです。」
「それはつらそうね。」(続く)
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☆ écru nacci ☆
--- セーラー・カメ デビュー! そのA
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あのとき以来、私はどうもおかしい。
突然凶暴になり、ガキさんにエルボーをくらわせたりする。
ロケ中に急にこぶしを握り締め「よっしゃ、いくぞ〜!」とか言ってたりする。
人に話せない、おかしな夢をしょっちゅう見るようになった。いったいどうしたのだろう、私は。
「管理人さん、えり毎晩同じ夢をみるの。」
「うん。」
「まぶしいライトの中にえりが立ってる。でもコンサートでステージに立ってるんじゃないの。」
「うん。」
「水着みたいなコスチュームを着て、脚にはレガースとシューズ、ひじとひざにサポーターをつけてるの。」
「周りには鉄柱とロープがあり、お客さんがたくさん座って見ている。そうだろう?」
「うん、そう。毎晩こんな夢をみるの。これって何の夢?」
「君が後楽園ホールでデビューする夢だ。君がレスラーになる夢だよ。」
「はあっ?レ、レスラー?何言ってるの、管理人さん?」
「隠さなくてもいい。オレにはわかってる。君は小さい頃からレスラーになりたかった。そうだろ?」
「ち、違うよ!私はアイドルになりたかったの!モーニング娘。に入りたかったの!」
「うん、それはそうだろう。でもレスラーにもなりたかった。小さい頃TVで女子プロの試合を見てカッコイイと思ってあこがれていた。」
「ち、違う!私はプロレスなんか大嫌い!レスラーにあこがれたことなんかない!」
「その気持ちをムリに忘れようとしてるだけだ。この間のことを覚えているだろう?
デスマッチで血だるまになったオレを見て君は激しく動揺した。隠していた君の深層心理があの時呼び起こされ、理性を凌駕して歯止めが
きかなくなったのだ。あの日の体験以来君の中で何かが変わった。」
「君は小さい頃からレスラーになりたかった。女子プロレスラーにあこがれていた。リングの上での戦いが好きだった。
君もオレと同じ人種だ。血に飢え、戦いを欲する。リングがないと生きられない人種なのだ。」
「ち、違う!私はそんなんじゃない!私はただの女の子だよ!戦いなんかしたくない!!」
「なちがみさまに止められてるし、これ以上君を惑わすのはやめておくよ。でも人間の本性は隠しきれるものではない。
オレがデスマッチなしでは生きられないように、いつか君も女子レスラーとして戦いを求めてリングに上がるときが来る。」
「そんなの、うそだあ〜!!」 (続く)
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