☆ acoustic nacci ☆

--- さらばハロー・プロジェクト F ---

「管理人さん、なちかべがみはもういらないわ。」
なちがみは残酷に言い放った。

「壁紙は作らなくていい。もう必要ないの。」
「えっ?」
「アイドル・安倍なつみはもうこの世に存在しない。なちかべがみはもう何の意味もない、ただの過去の画像ファイルでしかないわ。」

「なちがみさま。たったそれだけのものなのですか?過去を懐かしみ涙する、たったそれだけのものなのですか?」
「そう、それだけのものよ。在りし日のなっちの壁紙。かつてのアイドル・安倍なつみの姿を記録したデスクトップサイズのJPEG画像。
それ以上でもそれ以下でもないわ。」

絶望感が管理人を襲う。
「なちがみさま、オレは今まで何をやってきたのでしょう。この虚無感は何ですか?」
「残されたなちかべがみはあなたがなっちを愛した証拠なの。」

「1997年から2010年にかけて安倍なつみという稀有のアイドルが存在した。天使と呼ばれ多くの人々から愛された。
そしてあなたの人生のうちの11年間。あなたが安倍なつみというアイドルを愛し同じ時代を生きたという事実。その証拠がここにあるの。」

11年間なっちを愛した証拠?
そうだ、壁紙を大量に作ったのもサイトを何年も続けたのもずっとなっちが大好きだったからだ。
なっちがいなかったら、なっちを愛したこの11年間がなかったらオレの人生はもっとつまらないものだったに違いない。

「そしてこのサイトが存在したあかしでもあるわ。私とあなたとカメちゃんが過ごした楽しかったあの頃の思い出。」

なちがみさまとカメちゃんと一緒に3人で続けたサイト。
壁紙を作り続けたあの日々。楽しかった。
でももう終わった。2度と帰ってこないのだ。
わかっている。わかってはいるのだが、これではあまりに悲しい・・・。

「なちがみさま、教えてください。なっちはなぜずっと隠していたのでしょう、恋人の存在を。なぜずっと黙っていたのですか。」(続く)

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☆ ikio kasanemashou nacci ☆

--- さらばハロー・プロジェクト G ---

「なちがみさま。なっちはなぜずっと隠していたのでしょう、恋人の存在を。なぜずっと黙っていたのですか。
雑誌にスクープされることもなかったし、交際宣言もなかった。ある日突然に入籍・引退発表なんて。あまりに唐突すぎる。
いまだに事実を受け入れられないファンもたくさんいます。」

「それがアイドルというものだから。なっちはファンのことをいつも考えていたからよ。ファンが愛したのはアイドルのなっち。でもなっちだって
一人の女性だから安倍なつみとしてのプライベートだってある。それはアイドルの部分とは両立できないものなの。」
「確かに他の連中と違ってなっちの引き際はきれいなものでした。交際をスクープされ自らアイドルでいることを放棄した連中とは違う。」

「モー。10でなっちが言ったこと、覚えてる?"(結婚は)憧れるけど私にはやることがあるし、今じゃない。"そう言ったでしょう?
アイドルの仕事をやり終えたから結婚したの。最後まで自覚的にアイドルであり続けたのがなっち。ファンの人たちを思ってのことよ。」

なちがみの体が宙に浮き、透き通って消えていく。

「さようなら、管理人さん。二度と会うことはないわ。最後まで私の正体を明かすことはなかったけれど。」
「なちがみさま!」
「サイトはなくなったけど今まで作ったなちかべがみは消さないで残しておいて。あなたの思い出の中に私はいるから。じゃあね。」
「なちがみさま!待ってください!!」

こうしてなちがみは去り、もう二度と管理人の前に現れることはなかった。
2011年春、"なちがみ さばいばー"消滅。

いつか確実に訪れる近未来のシミュレーション。5年後かも知れないし3ヶ月先かも知れない。
あっけない幕切れだが、最後はこんなものかもしれないな。 (終わり)

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